新刊本は世界に向けています。

2020年1月に刊行予定の写真家・清水朝子さんの作品集。この作品集には清水さんの写真だけでなく、彼女の心の内側が散文で綴られています。しかも日本語だけでなく英文でも。

ヨーロッパで個展を開くなど海外にファンが多いだけに英訳は必須。しかも清水さん自身がその英訳に取り組んでいます。

彼女のブログには英訳を通して感じたさまざまなことが記されています。

たとえばロバート・キャンベルさんのこと。

どんな話なのか、ぜひ訪れてみてください。

http://shimizuasako.com/?p=1793

 

 

Open House

毎年、秋にロンドン市内で行われる恒例の建築イベント

「Open House」に行ってきました!

「Open House」とは、ロンドン市内にある800軒以上の由緒ある建物や

ユニークな建築を無料で自由に見学できるイベントです。

見学できるのは、例えばテレビ中継でもすっかりお馴染みの「ダウニング街10番地」や外務省、アメリカ大使館、最高裁判所(事前予約が必要、一部抽選あり)など、

ふだん滅多に入ることができない政治の中枢から、いつもはclosedのロイヤルの教会、

貴族の館、仕立て屋街として有名なサヴィルローの工房、果ては有名建築家の手による個人邸宅まで、この日ばかりは大手を振って、自由に行き来できるのです。

 

今年は、9月21日(土)、22日(日)に行われました。

初日にまず訪れたのが、マルクス記念図書館。マルクス主義社会主義の文献を扱う労働者のための会員制図書館です。

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1738年にチャリティースクールとして建てられ、1933年にマルクス記念図書館として整備されたそう。ロシア革命前夜、ロンドンに亡命していたレーニンがここに事務所を構え、ロシア語の新聞を印刷・発行して、革命を鼓舞したという歴史的な場所です。

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マルクス記念図書館のあるクラーケンウェルは、当時、印刷の中心地であったシティからも近く、印刷業が盛んな場所だったそうです。写真には撮れませんでしたが、レーニンが使ったという古い印刷機が置いてありました。

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次に行ったのは、最高裁判所

ふだん滅多に入れない場所なので、とても混んでいました。

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法廷は2階に10室ほどありましたが、撮影はできませんでした。

その代わり、裁判官の衣装を試着できるコーナーがあり、賑わっていました。

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2日目は、古い歴史が残るシティを巡りました。

まず訪れたのが、「ボウの鐘」で有名なセント・メリー・ル・ボウ教会。

生粋のロンドンっ子、コックニーとは、ボウの鐘が聞こえる範囲で生まれた人たち

を指すそうです。

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イギリスが誇る偉大な建築家、クリストファー・レンが手がけた建物の一つ。

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次に訪れたのが、セントポール寺院のすぐそばにある「Stationers Hall」

イギリスで印刷が盛んに行われるようになった16世紀、セントポール寺院のそばに

印刷業者や紙業者、インク業者など、文房具(stationary)を扱う業者がたくさん集まっていたと言います。まだ出版社が存在しない時代のこと。印刷にまつわる職人たちが、Stationersというギルド(同業者組合)を作り、印刷業を行っていました。

当時、活気があった組合だったことは、建物の立派さを見れば一目瞭然。

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館内では印刷会社や出版社、王室御用達の製本所がブースを出し、展示会が行われていました。

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こちらはユニークな本作りをアピールする出版社。

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印刷業者さんの見本帳。

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装丁も布を使った並装丁と、

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一部に革を使う装丁、全革装丁など選べるようになっており、値段も変わってきます。

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イラストブックを扱う出版社もブースを出していました。

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そして、最後に訪れたのが、ハマースミスにあるウィリアム・モリスの工房兼住居、

ケルムスコットハウス。

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モリスは半地下にある印刷工房で、美しい活字を作り、デザインを施し、繊細な印刷術で様々な本を出版していました。

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裏庭に面したモリスの書斎。ゆっくりとした時間が流れていました。

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新刊準備中。

kukui booksの次作は写真家・清水朝子さんの作品集です。

素敵な写真の数々に清水さんの瑞々しい文章が散りばめられた

写真集+詩集のような書籍です。

今は出版準備に向けてデザイナーや印刷所の方々と打ち合わせの真っ最中。

順調にいけば、来年1月22日ごろ書店に並びます。

ぜひご期待ください!

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小さな本屋めぐり③ (Donlon Books & マーケット)

当初は、King's Crossに住んでいたせいもあり、

最近、若者たちに人気だというロンドンEast&Northエリアを

せっせと歩きまわっていました。

特に、今一番アツいとされる、HoxtonやShoreditchのあたりに、

良い本屋さんはないかと探していたら、

見つけました!

「Donlon Books」

 

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2008年にオープン。

主に独立系の出版社が発行するアート本や自費出版の写真集、詩集、zinなどを

扱う小さな本屋さんで、出版社も兼ねています。

 

「Donlon Books」のウリは、他の本屋では扱わない少ロットの

出版物を扱っているところ。

 

LGBT文学やカウンターカルチャー、ポルノまで、

興味深いジャンルの本や雑誌が所狭しと並んでいて、

「Donlonに行けば、欲しい本が見つかるよ」というのが

ロンドンの若者の間で定説になっているようなのです。

 

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特に週末Marketで賑わう土曜日の午後は、

店内は足の踏み場もないほど混雑します。

 

「Donlon Books」は、Hoxton地区のBroadway Marketという通りにあります。

その地名通り、Broadway Marketは週末だけ開かれる、

ロンドンでも人気のマーケットです。

 

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天気の良い日には、近くにある公園、London Fieldsを散歩がてら

たくさんのご近所さんたちで賑わいます。

 

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60年代はファッションも音楽もCarnaby Streetが流行の発信地でした。

それから、パンク旋風がKings Roadで巻き起こり、

1999年には、映画「ノッティング・ヒルの恋人たち」が大ヒット。

Notting HillやPortobello Marketが、おしゃれピープルの間で

注目されるようになりました。

 

このようにロンドンの文化の発信地は時代とともに移り変わってきています。

今、ロンドンの若者たちが集まるのは、

このLondon FiealdsのまわりやShoreditchあたり。

HacknyエリアがHOTです。

 

最後に、最近、私が見つけた一押しのカフェ&バーが、ここ。

 

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Hackneyの自治体が持つ老朽化したビルを一般に開放し、

シェアオフィスやシェアハウスに改修した話題スポット「Netle House」。

その屋上にあるのが、ロンドン市内を見渡せるオープンスペース「Netle360」です。

古い階段を登っていくと、いきなり眺望が開けます。

人工芝のスペースで、若い人たちが思い思いのスタイルで、

おしゃべりを楽しんでいます。

 

ロンドンでは、春から夏にかけて日没時間がどんどん伸びて、

6月の夏至のころは夜10時まで夕暮れが楽しめます。

この夏にロンドンを訪れる予定がある人は、

ぜひ、Hackneyエリアに足を運んでみてください。

 

 

Donlon Books

75 Broadway Market,London

E8 4PH

www.donlonbooks.com

 

Netli360

1 Westgate St,London

E8 3RL

www.netli360.com

 

 

 

 

図書館ナイトクラブ⁈

British Library (大英図書館)はイギリスの国立図書館で、

その蔵書数は1億5000万点以上だと言われています。

日本で一番大きい国会図書館の蔵書数が5000万点に満たないと言うのですから、

世界最大級の図書館であることがわかります。

 

そのBritish Libraryで、今開催中の「Writing(書くこと)」展に関連した

ナイトツアーがあると言うので、行ってきました。

 

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夜7時30分から10時まで。

大人15ポンド、18歳以下は10ポンド。

展覧会を夜に見るツアーだと思い、気軽に参加してみたら、

なんと大英図書館がナイトクラブになっていました!

 

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DJがノリノリの音楽をかけ、Barカウンターにはビールやワインが並んでいます。

広い空間が鮮やかな照明で飾られています。

 

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ゲストはBarカウンターで好きな飲み物をオーダーしてから(有料)、

館内のあちこちに用意されているブースを回りながら、

好きな色のペンで文字を書いたり、

活字を切り取ってはり合わせて文章を作ったり、

タイプを打ったり、印刷したり、

思い思いに「書くこと」を体験し、

その楽しさに触れるような仕掛けがいくつも提示されていました。

 

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この展覧会では、「書くこと」の未来についても触れています。

デジタル技術の発達で、私たちが積み重ねてきた「書く」技術が

大きく変わってきたと指摘しています。

従来のように文章や文字ではなく、

絵文字やイラストで”思い”や”感情”を伝えられるようになったからです。

 

そして、「emoji」のブースもありました。

日本語の「絵文字」は、世界共通語になっていました!

 

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 公共の図書館でワインを飲みながら、

リラックスした雰囲気で展示が見られる。

 

日本の図書館では考えられない新鮮な体験でした。

 

British Library (大英図書館)

96 Euston Rd.London

NW1 2DB

www.bl.uk/writing

「Writing」展は2019年8月27日まで。

 

小さな本屋めぐり② (Tender BOOKS & ICA bookshop)

 Ti Pi Tinのカーチャさんに、「他に面白い本屋さん、どこかある?」

と聞いたら、真っ先に挙げてくれたのが、ロンドンの中心部の

セシルコートにある「Tender BOOKS(テンダーブックス)」でした。

 

セシルコートはレスタースクエアそばの本屋街で、

希少本を扱う古書専門店や地図専門店などが軒を並べる有名なストリート。

ドアを押すにも勇気がいりそうな店構えが多いところとしても有名です。

 

訪れた時も、通りの建物が全体的に改装中で、余計、敷居が高そうでした。

 

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お目当ての「Tender BOOKS」はすぐに見つかりました。

ウィンドウには、「STUDIO 54  DISCO Tribe」の文字。

その下には、踊り狂う人々(Tribe)の写真が置かれていて、

思わずぐーっと吸い寄せられていました。

 

70年代のNYを牽引した有名なディスコ「スタジオ54」。

そこに集う人たちを写真家William Couponが

モノクロでスナップした写真展を開催中でした!

 

「Tender BOOKS」は、写真集を始めアート関係の本や、

自費出版の書籍、詩集、写真集などを多く扱う書店です。

その活動はワールドワイドで、今回の写真展も

カナダ・トロントの「Rare Photo Gallery」と共催で行なっていると

代表のTamsin Clarkさんが教えてくれました。

 

もちろん写真の販売もしています。

そう言う意味では、ギャラリー的な要素も。

「スタジオ54」の常連客だったアンディ・ウォーホール

トルーマン・カポティ、グレース・ジョーンズなど

アイコン的な人たちの写真も置いてあったそうですが、

すでに売れてしまったそうです。

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写真展以外で面白かったのは、

店内に、日本語の本や日本関係の書籍が並んでいたこと。

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増井和子著「KENZO TAKADA」は分厚い洋書です。

高田賢三が描いたデザイン画の数々、

コレクション風景のスナップあれこれ、

ロングインタビューなど、デザイナー高田賢三のすべてを網羅した

と言うくらいのボリューム&熱量がこもった力作でした。

 

抹茶ブームのせいか、英語版茶道雑誌もありました。

Tamsinさんに聞くと、日本人作家では荒木経惟森山大道が有名で、

写真集がよく売れているようです。

 

帰りに、バッキンガム宮殿に通じるThe Mall通りにある、

やはり日本人写真家の作品を多く揃えていると教えてもらった

ICAギャラリー(現代美術館)のBook shopに寄ってみました。

美術館併設の本屋だけあって、アート関係の品揃えも豊富です。

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ICAにはミニシアターが併設されており、この日は

ちょうど日本でも公開中の「幸せなラザロ」を上映していました。

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Tender BOOKS

6 Cecil Court London

WC2N 4HE

www.tenderbooks.co.uk

 

ICA  book shop

The Mall、St.James's  London

SW1Y 5AH

www.ica.org.uk
 

 

小さな本屋めぐり ① (Ti Pi Tin )

日本を発つ前からチェックしていた小さな本屋さんの

「Ti Pin Tin(ティー・ピィー・ティン)」。

 

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マニアックなロンドンのガイドブックで知った本屋さんです。

 

場所はロンドン北部、Dalston(ダルストン)のはずれにあります。

この辺りとオリンピックスタジアムが建設された東部は、

2012年のロンドン オリンピック以降に再開発され、

注目のお店が点在する話題のエリアです。

キングスクロスからはバスで簡単に行けるので、

色々と探索してみました。

 

ガイドブックによると、「Ti Pi Tin」 は2009年にオンライン書店として

スタートした後、この店舗を構えたそう。

独立系出版社の書籍や自費出版の本を多く取り揃えていることでも

有名です。

 

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見ていくと、本棚のあちらこちらに、

思いがこもった詩集や斬新なデザインの写真集など、

丁寧に作られた自費出版本がたくさん置かれていました。

そして、アート系のユニークな雑誌やZINも。

 

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オーナーのカーチャさんに聞くと、

自費出版の本を100冊以上は扱っている、とのこと。

時々、出版記念パーティや講演会なども行なっているそうです。

この小さな本屋さんが文化の発信基地になっている様子がわかります。

 

そして、やはりここにも本をプレゼントするための

ラッピングペーパーが置いてありました。

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帰りは歩いてダルストンの駅へ。

途中に、やはりこのエリアの文化の発信基地である、

「リオ・シネマ」がありました。

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リオ・シネマは100年近く続く映画館です。

スクリーンが1つだけしかありませんが、

メジャーな作品から芸術作品まで上映する前衛的な映画館です。

1930年代のアールデコがそのまま内装に残されているそうなので、

ロンドン 滞在中に、ぜひ行ってみたいと思います。

 

 

Ti Pi Tin

47 Stoken Newington High St.

London N16 8EL

www.tipitin.com

 

Rio Cinema

107 Kingsland High St.

London E8 2PB

www.riocinema.ndirect.co.uk