毎年、秋にロンドン市内で行われる恒例の建築イベント
「Open House」に行ってきました!
「Open House」とは、ロンドン市内にある800軒以上の由緒ある建物や
ユニークな建築を無料で自由に見学できるイベントです。
見学できるのは、例えばテレビ中継でもすっかりお馴染みの「ダウニング街10番地」や外務省、アメリカ大使館、最高裁判所(事前予約が必要、一部抽選あり)など、
ふだん滅多に入ることができない政治の中枢から、いつもはclosedのロイヤルの教会、
貴族の館、仕立て屋街として有名なサヴィルローの工房、果ては有名建築家の手による個人邸宅まで、この日ばかりは大手を振って、自由に行き来できるのです。
今年は、9月21日(土)、22日(日)に行われました。
初日にまず訪れたのが、マルクス記念図書館。マルクス主義と社会主義の文献を扱う労働者のための会員制図書館です。
1738年にチャリティースクールとして建てられ、1933年にマルクス記念図書館として整備されたそう。ロシア革命前夜、ロンドンに亡命していたレーニンがここに事務所を構え、ロシア語の新聞を印刷・発行して、革命を鼓舞したという歴史的な場所です。
マルクス記念図書館のあるクラーケンウェルは、当時、印刷の中心地であったシティからも近く、印刷業が盛んな場所だったそうです。写真には撮れませんでしたが、レーニンが使ったという古い印刷機が置いてありました。
次に行ったのは、最高裁判所。
ふだん滅多に入れない場所なので、とても混んでいました。
法廷は2階に10室ほどありましたが、撮影はできませんでした。
その代わり、裁判官の衣装を試着できるコーナーがあり、賑わっていました。
2日目は、古い歴史が残るシティを巡りました。
まず訪れたのが、「ボウの鐘」で有名なセント・メリー・ル・ボウ教会。
生粋のロンドンっ子、コックニーとは、ボウの鐘が聞こえる範囲で生まれた人たち
を指すそうです。
イギリスが誇る偉大な建築家、クリストファー・レンが手がけた建物の一つ。
次に訪れたのが、セントポール寺院のすぐそばにある「Stationers Hall」
イギリスで印刷が盛んに行われるようになった16世紀、セントポール寺院のそばに
印刷業者や紙業者、インク業者など、文房具(stationary)を扱う業者がたくさん集まっていたと言います。まだ出版社が存在しない時代のこと。印刷にまつわる職人たちが、Stationersというギルド(同業者組合)を作り、印刷業を行っていました。
当時、活気があった組合だったことは、建物の立派さを見れば一目瞭然。
館内では印刷会社や出版社、王室御用達の製本所がブースを出し、展示会が行われていました。
こちらはユニークな本作りをアピールする出版社。
印刷業者さんの見本帳。
装丁も布を使った並装丁と、
一部に革を使う装丁、全革装丁など選べるようになっており、値段も変わってきます。
イラストブックを扱う出版社もブースを出していました。
そして、最後に訪れたのが、ハマースミスにあるウィリアム・モリスの工房兼住居、
ケルムスコットハウス。
モリスは半地下にある印刷工房で、美しい活字を作り、デザインを施し、繊細な印刷術で様々な本を出版していました。
裏庭に面したモリスの書斎。ゆっくりとした時間が流れていました。